フードロスとは
フードロスとは、本来食べられるにもかかわらず捨てられてしまう食品の総称です。これには、生産段階での規格外品、流通過程での損傷、小売店での売れ残り、そして家庭や飲食店での食べ残しや期限切れ食品などが含まれます。国連食糧農業機関(FAO)は、フードロスを「食品サプライチェーン全体で、人間の消費を目的として生産された食品が、最終的に消費されずに廃棄されること」と定義しています。
仕組みと特徴
フードロスは、食品のサプライチェーン全体で多岐にわたる要因によって発生します。生産段階では、天候不順による収穫物の品質低下や、市場の規格に合わない「規格外品」が廃棄されます。例えば、形が不揃いな野菜や果物は、品質に問題がなくても流通に乗らないことがあります。国連環境計画(UNEP)の2021年の報告書によると、世界のフードロス全体の約13%が生産段階で発生していると推定されています。
流通過程では、輸送中の破損や温度管理の不備、小売店での過剰な発注や消費期限切れによる廃棄が主な原因です。特に、日本の商慣習である「3分の1ルール(製造日から賞味期限までの期間を3等分し、最初の3分の1を過ぎた商品は納品しない、次の3分の1を過ぎた商品は店頭から撤去するという慣習)」は、フードロスの一因として指摘されてきました。この慣習は近年見直しが進められています。
消費段階では、飲食店での作りすぎや客の食べ残し、そして家庭での買いすぎ、調理し忘れ、賞味期限・消費期限切れによる廃棄が大きな割合を占めます。日本の農林水産省と環境省の推計では、2021年度の日本のフードロス量は年間523万トンに上り、このうち家庭からの発生が244万トン、事業系が279万トンでした。これは、国民一人当たり毎日約113g、茶碗一杯分のご飯に相当する量を捨てている計算になります。
実際の使われ方
フードロスという言葉は、具体的な社会課題を指し、その削減に向けた多角的な取り組みの中で使われています。
一つ目の事例は、小売業界における「見切り販売」や「フードバンク」への寄付です。スーパーマーケットでは、消費期限が近づいた商品を割引価格で販売することで、廃棄を減らす努力がなされています。また、まだ食べられるが店頭では販売できない商品を、食品支援団体であるフードバンクへ寄付し、生活困窮者などへ提供する活動も活発です。これにより、食品の有効活用と社会貢献を両立させています。
二つ目の事例は、食品メーカーや飲食店での「アップサイクル食品」の開発です。例えば、これまで廃棄されていた野菜の皮や茎、果物の搾りかすなどを加工し、新たな食品や飲料として生まれ変わらせる取り組みです。ビール製造工程で出る麦芽粕をクッキーやパンの材料に利用したり、規格外の果物をジャムやドライフルーツに加工したりするケースが見られます。これは、単なる廃棄削減だけでなく、新たな価値創造にもつながっています。
三つ目の事例は、家庭における「食品ロスダイアリー」の活用です。これは、家庭でどのような食品が、なぜ捨てられたのかを記録することで、自身の食料消費行動を見直し、無駄を減らすためのツールです。冷蔵庫の中身を定期的にチェックする習慣や、食材を使い切るためのレシピ活用など、具体的な行動変容を促す目的で使われます。
知っておきたいポイント
フードロスと混同されやすい概念に「食品廃棄物」がありますが、これらは厳密には異なります。食品廃棄物には、食べられない部分(骨や卵の殻など)や、製造過程で発生する副産物(おから、酒粕など)も含まれます。一方、フードロスは「食べられるのに捨てられる食品」に限定されるため、食品廃棄物の一部であると理解すると良いでしょう。
また、フードロス削減の取り組みは、単に食品を無駄にしないというだけでなく、その裏にある環境負荷の軽減にも大きく貢献します。食品の生産には、水、土地、エネルギーなどの資源が大量に投入されており、廃棄された食品は焼却される際に温室効果ガスを排出します。したがって、フードロスを減らすことは、気候変動対策や資源の持続可能な利用にも直結する重要な課題です。