💻IT・テクノロジー用語解説

ゼロトラストセキュリティとは?その本質と仕組み

ゼロトラストセキュリティとは、ネットワーク内外問わず「何も信頼しない」を前提に、すべてのアクセスを常に検証し最小限の権限のみを与え、多様な脅威からシステムを守る現代のセキュリティモデルのことです。

2026年3月16日2 閲覧ゼロトラストセキュリティ

ゼロトラストセキュリティとは

ゼロトラストセキュリティは、情報システムへのアクセスにおいて「何も信頼しない(Never Trust, Always Verify)」を前提とするセキュリティモデルです。従来のセキュリティ対策では、一度ネットワーク内部に入れば安全と見なす「境界型防御」が主流でしたが、ゼロトラストでは、ネットワークの内外を問わず、すべてのユーザー、デバイス、アプリケーションからのアクセス要求を常に疑い、厳格に検証することを基本とします。これは、内部からの脅威や、外部からの侵入が巧妙化する現代のサイバー攻撃に対応するために提唱されました。

仕組みと特徴

ゼロトラストセキュリティモデルは、主に以下の原則と技術的要素によって成り立っています。

  1. 明示的な検証(Verify Explicitly): すべてのアクセス要求に対して、ユーザーの身元、デバイスの状態、アクセス元、アクセス先のデータ機密性などを多角的に検証します。多要素認証(MFA)やデバイス認証、リスクベース認証などが活用されます。
  2. 最小特権アクセスの原則(Use Least Privileged Access): ユーザーやデバイスには、その役割を遂行するために必要最小限の権限のみを付与します。継続的なアクセス監視と評価により、権限は動的に調整されることもあります。例えば、特定のプロジェクト期間中のみ、特定のデータベースへの読み取り権限を付与し、期間終了後に自動的に剥奪する運用が考えられます。
  3. 侵害を前提とした設計(Assume Breach): 内部ネットワークも安全ではないという前提で、システムを設計します。万が一、一部が侵害されても、被害が全体に拡大しないよう、マイクロセグメンテーションやネットワーク分離などの技術を用いて、システムを細かく区切ります。これにより、攻撃者が横断的に移動する「ラテラルムーブメント」を抑制します。
  4. 継続的な検証と監視: アクセスが一度許可された後も、ユーザーやデバイスの振る舞いを継続的に監視し、異常な活動を検知した場合は即座にアクセスを停止したり、再認証を要求したりします。これは、ユーザー行動分析(UBA)やセキュリティ情報イベント管理(SIEM)システムによって実現されます。

これらの原則は、ネットワークの場所やデバイスの種類に依存せず、一貫したセキュリティポリシーを適用することを可能にします。

実際の使われ方

ゼロトラストセキュリティは、多様なIT環境でその有効性を発揮しています。

  • リモートワーク環境でのセキュリティ強化: 従業員が自宅や外出先から会社のシステムにアクセスする際、デバイスの種類や接続場所に関わらず、すべてのアクセスを厳しく検証します。VPNだけに頼らず、デバイスの状態(パッチ適用状況、マルウェア感染の有無など)やユーザーの認証情報を常に確認することで、安全なリモートアクセスを実現します。例えば、MicrosoftのAzure AD Conditional AccessやGoogleのBeyondCorpなどがこの概念に基づいています。
  • クラウドサービスの安全な利用: 企業がSaaS(Software as a Service)やIaaS(Infrastructure as a Service)などのクラウドサービスを導入する際、データが社内ネットワーク外に存在するため、従来の境界型防御では保護が困難です。ゼロトラストでは、クラウド上のアプリケーションやデータへのアクセス要求も、社内システムへのアクセスと同様に厳格に認証・認可し、最小限の権限で利用させます。これにより、クラウド環境におけるデータ漏洩リスクを低減します。
  • サプライチェーンセキュリティの確保: 複数の企業が連携してシステムを構築・運用するサプライチェーンにおいて、各社のセキュリティレベルは異なります。ゼロトラストは、自社システムにアクセスする外部パートナーやベンダーに対しても、自社の従業員と同等かそれ以上の厳格なアクセス制御を適用します。これにより、サプライチェーン全体のセキュリティリスクを管理し、一社からの侵害が全体に波及するのを防ぎます。

知っておきたいポイント

ゼロトラストセキュリティは、単一の製品や技術で実現できるものではなく、複数の技術要素と組織的なポリシー変更を伴う戦略的なアプローチです。導入には、既存のITインフラストラクチャの評価、アクセス制御ポリシーの再定義、多要素認証やID管理システム(IAM)の導入、継続的な監視体制の構築など、多岐にわたる取り組みが必要です。また、ユーザーエクスペリエンスとのバランスも重要であり、セキュリティ強化と利便性の両立が求められます。ゼロトラストは、一度導入したら終わりではなく、常に変化する脅威環境に合わせて継続的に見直し、改善していく運用が不可欠です。

他の記事

⛩️日本・和文化雑学

江戸長屋の助け合い:現代にも通じる共助の精神

江戸時代の長屋では、住民同士が密接に連携し、互いに支え合う独自の文化が育まれていました。この記事では、火事や病気といった非常時だけでなく、日々の暮らしの中に根付いていた具体的な助け合いの事例を通じて、江戸の共助の精神とその背景にある社会構造を解説します。

2時間前2
⛩️日本・和文化雑学

富士山信仰の起源と変遷:なぜ人々は山を神と崇めたのか

日本最高峰の富士山は、古くから人々の信仰を集めてきました。この記事では、噴火を繰り返す活火山がどのようにして神聖視され、修験道や富士講といった独自の信仰形態を生み出したのか、その歴史的背景と変遷を解説します。富士山が単なる自然の造形物から、畏敬の念を抱かれる対象へと変化した過程を紐解きます。

2時間前2
⛩️日本・和文化雑学

日本・中国・韓国、箸文化の奥深き違いを徹底解説

日本、中国、韓国の箸文化には、素材、長さ、持ち方、食事作法に至るまで、それぞれの歴史と風土に根ざした明確な違いが存在します。本記事では、各国で異なる箸の役割や、食文化の多様性を具体的な事実に基づいて解説し、東アジアの食卓に広がる奥深い習慣を紹介します。

2時間前1
⛩️日本・和文化雑学

なぜ歌舞伎の女形は男性が演じるのか?その歴史的背景を解説

歌舞伎の舞台で女性役を男性が演じる「女形」は、日本の伝統芸能における独特な表現形式です。この記事では、女形が誕生し、発展した歴史的背景を深掘りし、その芸術性がどのように確立されてきたのかを解説します。江戸時代の社会情勢や風俗規制が、この演劇形式に与えた影響を具体的に紹介します。

2時間前2